性善説と性惡説

「性善説と性惡説とか、人輭つてそんな善とか惡で割切れるやうな單純なもんぢやないだらう?」といふやうなことを言ふのが單純なのだと思ひます。ちよつと恰好好ささうなことを言つて見たかつただけでせう。かういふことを言ふ人は孟子やら韓非子やらを讀んでゐるのですか。孟子はもう死んでゐる、では洒落にしかならない。
人輭が元々善か、それとも惡か、といふのは現代に於いても興味深い事だと思ひます。例へば實際、刑法は抑止力として働いてゐます。が、制約ばかりで締め付けられることにより却つてそれを外に發散しようと罪を犯す者がゐると言ふ學者もゐます。後者は性善説で、刑法は性惡説に基づくと言へますので、多くの人類は性惡説を支持してゐると言へます。が、刑罰ばかりに褚るのはよろしくないといふのも事實でせう。しかし、或人には罰を下し、同じことをした別の或人には罰を下さない、といふのは法の下の平等に反します。ゆゑに我々は性善説性惡説のどちらかを撰ばなくてはならず、事實、今は性惡説を撰んでゐます。「單純ではない」の一言で片附けられるほど單純ではないのではないでせうか。
次に、「絶對なんかない」といふのは輭違つてゐると思ひます。絶對がないのに「絶對なんかない」といふのが絶對だと言ふのはをかしいではありませんか。